acas社長 大浦昌尚ブログ

HOME > acas社長 大浦昌尚ブログ > カーテンが開いた 5

カーテンが開いた 5

2019.11.30

『カーテンが開いた』の新聞スクラップに

出会ってから8年後

あるマンション新築工事の施工者選定に

熊谷組さんが参加された

 

ごつい感じの男性と

名刺交換をさせていただいたときに

からだが震えたのを今でも覚えている

 

「あっ!あのひとだ。この人が関吉さんだ!」

 

そのプロジェクトでは一緒に働かせていただくことは

叶わなかったが

その後何度かご自身が書かれた色鉛筆画を

携帯メールで送っていただいた

 

イメージ通りの素敵な方だった

 

*****

『カーテンが開いた』5

 

兵庫県立こども病院の工事現場。

作業所2階の事務室に一枚のピンク色の画用紙が届いた。

前夜の「七夕野外映画祭」への、

子どもたちのお礼の寄せ書きだった。

 

■ええがありがとう

「ええががんみせてくれたありがとう」

「7月7日はよかった」…。

入院中の病室で映画が見られた。

手作りのスクリーンで。

子どもたちの素直な感動があふれていた。

のぞき込むように、

回し読みした作業員らの顔がほころぶ。

宮西優(39)ら数人の目が、

きれいな丸文字にくぎ付けになった。

「また来年もよろしく。西山しのぶ」

と書かれてあった。

「この子、来年もいるつもりやろか」。

宮西らは胸を詰まらせた。

西山しのぶ、11歳。

彼女の「真意」は違っていた。

それを男たちが知るのは、

かなり先のことになる。

 

■Xマスツリー光った

冷夏が足早に去り、

秋風がいつしか木枯らしに変わっていく。

「電飾のクリスマスツリーを足場の壁に」。

また男たちは走り出した。

現場作業所長の関吉和明が設計図を引いた。

図面台に向かうのは8年ぶりだった。

手のあいた時間になると、

そっと引き出しから設計図を取り出し、

何度も書き直した。

落下防止用のグリーンネットの“モミの木”を

2千個の電球で飾る。

高さ12メートル、幅11メートル。

断熱材のスプレーで描く

「Merry Xmas」に、

ブリキ板で作ったピカピカの星。

 

■イブに少女は退院

設備会社の「タメさん」「サエキさん」が

知恵を絞り、

「ハマちゃん」「カイくん」が

かいがいしく動いた。

事情を聞いた出入り業者がネットや、

一日十数万円以上もするクレーンを

ただで貸してくれた。

12月17日夜、

外はみぞれ交じりの雨。

男たちの「思い」を込めた巨大なツリーが

六甲の夜に輝いた。

一週間、

この「光」を見続けた少女が

クリスマスイブの当日、

退院した。

笑顔がかわいい西山しのぶだった。

(敬称略)1994年(平成6年)2月12日

 

*****

大浦昌尚
株式会社アクアス

代表取締役
大浦昌尚 Masanao Ohura

大和の国に生を受け、とても明るい家族と周りの人と自然に育てられ、まじめで正義感が強いのは父譲り、面白く発想が豊かなのは母譲り、棟梁と指物師の両祖父の血を引き迷うことなく今の仕事に。 多くの人に助けていただき育てていただいた半生。これからご恩返しです。