acas社長 大浦昌尚ブログ
カーテンが開いた 5
『カーテンが開いた』の新聞スクラップに
出会ってから8年後
あるマンション新築工事の施工者選定に
熊谷組さんが参加された
ごつい感じの男性と
名刺交換をさせていただいたときに
からだが震えたのを今でも覚えている
「あっ!あのひとだ。この人が関吉さんだ!」
そのプロジェクトでは一緒に働かせていただくことは
叶わなかったが
その後何度かご自身が書かれた色鉛筆画を
携帯メールで送っていただいた
イメージ通りの素敵な方だった
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『カーテンが開いた』5
兵庫県立こども病院の工事現場。
作業所2階の事務室に一枚のピンク色の画用紙が届いた。
前夜の「七夕野外映画祭」への、
子どもたちのお礼の寄せ書きだった。
■ええがありがとう
「ええががんみせてくれたありがとう」
「7月7日はよかった」…。
入院中の病室で映画が見られた。
手作りのスクリーンで。
子どもたちの素直な感動があふれていた。
のぞき込むように、
回し読みした作業員らの顔がほころぶ。
宮西優(39)ら数人の目が、
きれいな丸文字にくぎ付けになった。
「また来年もよろしく。西山しのぶ」
と書かれてあった。
「この子、来年もいるつもりやろか」。
宮西らは胸を詰まらせた。
西山しのぶ、11歳。
彼女の「真意」は違っていた。
それを男たちが知るのは、
かなり先のことになる。
■Xマスツリー光った
冷夏が足早に去り、
秋風がいつしか木枯らしに変わっていく。
「電飾のクリスマスツリーを足場の壁に」。
また男たちは走り出した。
現場作業所長の関吉和明が設計図を引いた。
図面台に向かうのは8年ぶりだった。
手のあいた時間になると、
そっと引き出しから設計図を取り出し、
何度も書き直した。
落下防止用のグリーンネットの“モミの木”を
2千個の電球で飾る。
高さ12メートル、幅11メートル。
断熱材のスプレーで描く
「Merry Xmas」に、
ブリキ板で作ったピカピカの星。
■イブに少女は退院
設備会社の「タメさん」「サエキさん」が
知恵を絞り、
「ハマちゃん」「カイくん」が
かいがいしく動いた。
事情を聞いた出入り業者がネットや、
一日十数万円以上もするクレーンを
ただで貸してくれた。
12月17日夜、
外はみぞれ交じりの雨。
男たちの「思い」を込めた巨大なツリーが
六甲の夜に輝いた。
一週間、
この「光」を見続けた少女が
クリスマスイブの当日、
退院した。
笑顔がかわいい西山しのぶだった。
(敬称略)1994年(平成6年)2月12日
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