acas社長 大浦昌尚ブログ
カーテンが開いた 6(最終)
児童養護施設の子どもたちから
クリスマスパーティーの招待状が届いた
ほぼ毎年参加させていただいているのに
今年は先約があり参加できず
若手の遠原君と石曽根君の参加となった
今年はプレゼントとして
吉野杉のお箸つくりキットと本を届けてもらった
顔見知りの子どもも少なくなったそうだが
これからも交流を続けていきたいと願う
そしてこの「カーテンが開いた」も
いよいよ最終である
改めてこの物語に出逢えたことに
感謝する
*****
『カーテンが開いた』6
梅の香りが漂い始めていた。
兵庫県社町。
中国自動車道に近い小学校に少女は元気に通っている。
■忘れられない日々
西山しのぶ、5年生。
色白のショートカットからあふれる笑顔がかわいい。
学校が好き。
そして算数も。
県立こども病院を退院して2か月になろうとしている。
忘れられない日々だった。
クレーンのこいのぼりに目を丸くした。
足場に映し出されたアニメの主人公に、
瞳(ひとみ)を奪われた。
光り輝くクリスマスツリーに、
じっと見入った。
「おじさんたちは工事をしているのに。
私たちのためにいろいろ考えてくれて」。
そんな思いでいっぱいだった。
映画のお礼に書いた
「来年もよろしく」は、
人一倍よく気がつく、
しのぶならではの心遣いだった。
■こんな感動友達にも
私はもう病院にはいないかも知れないが、
こんな感動を、
病気と闘う友に、
仲間に味わってほしい…。
来年も病院にいるのかな、
と思っていた男たち。
退院を聞き、
作業所長の関吉和明は
わが子のことのように喜んだ。
そして、
しのぶの「真意」がわかった時、
安達聡はこうつぶやいた。
「子ども心っていいなあ。本当にいいなあ」
冬枯れの工事現場。
今秋の完成を目標に工事は進む。
■計画はヒ・ミ・ツ
こいのぼりは昨年、
強風でかぎ裂きになったのを
事務員の小貫りつ子(48)が丹念に繕い、
今年の出番を持っている。
が、その少し前にはあのクレーンが、
足場が姿を消す。
関吉はまた悩んでいる。
「さて、どうしよう」。
彼のプランを記者は聞いた。
また病棟のカーテンが一斉に開き、
子どもたちが手をちぎれんばかりに
振るに違いない素晴らしい計画を…。
でも、それは桜が咲くまでの秘密にしておこう。
(この項終わり 敬称略)社会部 植松 実
1994年(平成6年)2月14日
*****