写真の建物は、賃貸マンションの「フルール西宮北口」です。

竣工は2009年３月でしたので、もう13年経過しています。

初めて施主にお会いした時、「街のためにクスノキを残したい」とのお考えを聞きました。

当時相談していた数社からは、道路際に立つクスノキを残せば「工事の効率が悪くなりますよ」等々言われ、クスノキを残す方法はないのだろうか、と悩んでおられました。

そこで弊社はクスノキを残す計画を提案させていただき、そして、この計画が現実となりました。

施主にはたいへん喜んでいただきましたが、我々にとっても大きな気付きがあり、設計思想のターニングポイントにもなった思い出深い物件です。

ですので「お客様の声」を取材させていただこうと企画した時、真っ先に「フルール西宮北口」が頭に浮かびました。

ただ、「13年も経っているし、こんなお願いしてもいいのだろうか？」と恐縮しながら電話をさせていただきくと、「いいよ！」と拍子抜けする（笑）、明るいお返事をいただきました。

お宅にお邪魔すると、お母様がコーヒーを淹れてくださいました。当時のお打合せ時に、いつも淹れてくださっていたコーヒーです。

「あのコーヒーだ」

声には出しませんでしたが、嬉しくて、ゆっくりと頂きました。

大学生の息子さんも同席くださり（当時小学2～3年生でしたよね）、終始にこやかにインタビューに応えていただき、時の流れを感じつつも、当時と変わらない関係性に「ありがたい」幸せな時間でした。

長い時間が経過しても、施主と楽しくおしゃべりできるという事が、設計者として最高に幸せな事だろうと思います。

急な申し出にもかかわらず、快く引き受けてくださりありがとうございました！